全盲クリエイターが音から映像を描く 生成AIで生まれた新感覚ミュージックビデオ「CROWN(Water Remix)」公開

バリアフリーeスポーツの企画・運営や、障害者の就労支援に取り組む株式会社ePARAは2026年4月8日、全盲のクリエイター4人が映像監督を務める映像表現プロジェクトの第1弾として、ミュージックビデオ(MV)「CROWN(Water Remix)」を公開したと発表した。音から広がるイメージを生成AIで映像化することで、「見えること」に依存しない、新しい映像表現の可能性を探る試みだ。

視覚以外の感覚から生まれるミュージックビデオ

このプロジェクトでは、視覚障害のあるクリエイターが楽曲を繰り返し聴きながら、音や振動、身体感覚、場面の空気感といった、視覚以外の知覚や感性を手がかりに作品世界を構想する。そこで浮かび上がった世界観やストーリーを言葉で丁寧に描写し、そのテキストをプロンプトとして生成AIに入力することで、ミュージックビデオの映像を形にしていく仕組みだ。

監督たちは、音楽から受け取った印象や感情を、色や光ではなく「温度」「重さ」「速さ」「距離感」などの感覚として捉え、それを言語化していく。AIは、その言葉を手掛かりに、見えない世界観を可視化する“翻訳者”として機能する。

初作品はSARUKANIの「CROWN」を再解釈

公開された「CROWN(Water Remix)」は、ヒューマンビートボックスクルー・SARUKANIの楽曲「CROWN」をもとに制作されたミュージックビデオである。まず原曲を聴き込み、音から広がるイメージをもとに映像のストーリーラインを設計。その後、生成AIを用いて映像を生成し、完成した世界観や物語に合わせて楽曲も新たにアレンジし直すことで、オリジナルとは異なる表情を持つ作品として仕上げた。

SARUKANI『CROWN(Water Remix)』のサムネイル画像 56567-72-b3283b558f4e576ffb26285ece0985b7-1280x720.webp

制作プロセスでは、視覚障害のある監督たちが、楽曲から想起した感覚や情景を詳細に言葉へと落とし込み、そのテキストを生成AIへのプロンプトとして入力。AIは、その指示に基づいて映像を生成し、監督たちは音声読み上げやスタッフとの対話を通じて内容を確認しながら、修正や追加の指示を重ねていった。

AIは、見えない監督たちの世界観や感覚を、第三者にも共有できる映像として提示するための“橋渡し役”となっている。

疾走感や孤独感など「非視覚的イメージ」を映像化

映像の着想には、次のような、視覚以外の感覚に根ざしたイメージが取り入れられているという。

  • 新幹線に乗っているときに感じる、身体が前へ引っ張られるような疾走感
  • 水中に潜り、歓声やざわめきが届かなくなったときに生まれる、静けさと孤独の感覚
  • 太鼓の低く響く音から立ち上がる、闘争心や高揚感

こうした聴覚・触覚・身体感覚に基づくイメージを出発点に、生成AIを通じて映像へと変換していく点が、このプロジェクトならではの特徴だ。

@YouTube

「視覚中心」の映像制作を問い直す

人は多くの情報を視覚から得ているとされ、映像制作も長らく「見える人」の視点を前提としてきた。このプロジェクトは、その前提をあえて問い直し、視覚に頼らない知覚や感性を起点とした映像表現を提示する試みである。

ePARAはこれまで、バリアフリーeスポーツの普及や、障害者の就労機会の創出などに取り組んできた。今回の映像プロジェクトも、障害の有無にかかわらず、誰もがクリエイティブな活動に参加できる環境づくりを目指す取り組みの一環だ。

公開されたミュージックビデオ「CROWN(Water Remix)」は、YouTube上で視聴できる。

@YouTube


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